報道局だって・・・

<<おそまつだと思う>>

アナウンサーではないが、番組契約で「レポーター」をしていた頃の話。その番組は朝の生放送で全国の担当レポーターが地元のニュースをご紹介するというものだった。バラエティで名前が売れていたアナウンサーがしきっていたので、楽しい雰囲気だったが、報道局が担当する時間帯だった。その日によってでる地域が違い、一応「テーマ」があってそれにそったものを取材しに行く。ある時「台風」の特集を組んでいた。・・・というより、たまたま北海道がでる日に長崎や沖縄で台風情報が入り、そのニュースに無理くり合わせようということになった。でも・・・、北海道で「台風」と言ったって、あるわけないじゃん。しょせん無理な話、頭を悩ませていた。北海道だけ違うネタでもいいか交渉しなきゃ。と思っていたら、南の方で床下・・・浸水・・・!?の情報が飛び込んできた。「へぇー、意外なこともあるもんだ」と放送1時間くらい前だというのに「それーっ」と、ロケバスを走らせキー局(番組のおおもと東京の局)にも「間に合います!!」と連絡した。こんな風に、いきあたりばったりの中継と言うのはめったにないことなのだ。通常は、段取りを決めていて、取材する人や場所をあらかじめ確認して打ち合わせし、当日は1時間くらいまえには、カメリハ(カメラを通してリハーサル)ができるようにしている。生放送は特に何があるかわからない。だから「事故」にそなえて色々と準備が必要だ。それなのに、この日は「特別な」テーマのために、現場に着いたらマイクチェックをするのがやっとで、すぐに放送だ。きっとメイクを直している暇もないだろう。移動の車の中でファンデを塗り直し、声を出すためにディレクターとおしゃべりし、すぐに出れるようにしていた。

現場についた。さぁ、お目当ての床下浸水・・・はどこだ??ディレクター、カメラさん、音声さん、照明さん・・・みんなで探すけれどどこだかわからない。そこへ、ネタもとがやってきて、このへんだといいはる。見ると、確かに草が生い茂っている空き地がまるで田んぼのようになっている。でもこれでは「絵」にならない。どうやら、水はもうひいてしまったらしい。ほんの数十分前までは道路にまであふれだしていたので、運転手からの通報だったらしい。それでも放送時間はせまっている。何か「絵」になるものはないか。ディレクターは必死。始末書ものだそうだ。と、あるお家のガレージに水がまだ20センチほどたまっていたのを発見。実はこのガレージは地下。だけど、これくらいしか見つからなかったのだ。「えっ、これを映すの?うそでしょう?」と思った。私は新米だったので、どちらかと言うと視聴者側の見方でものを考えていたのだ。でもスタッフそれどころではない。なんとかこちらが担当するほんの3分間を完璧に作り上げようとしていた。とうとう私たちの前の局、○○放送がレポートをはじめた。ここはかなりひどい状況で、水の勢いで車が流されたり、街の中でもひざくらいの高さの泥水をこいで家に帰る様子だった。それを見ている間にも、こちらのガレージはどんどん水位が下がっていく。カメラには、「ばれないようにな」なんて言っていたディレクターだが、私には「ま、しょうがないよな。がんばれよ!」どうやら腹をくくったようだ。


にしてもさ、何をがんばるっていうの!!

「北海道の○○さ〜ん」呼ばれてイヤイヤ返事をする。水位はもう5センチ足らず、どう「言い訳」してよいものなのか。しどろもどろになって、「さっきまでは本当にこのくらいあったんですよー。たいしたことなくて良かった〜」これは本音とは大違い。たいしたことあって欲しかったくせにウソばっかりである。だけどこういう事もアリの生放送。キー局のアナウンサーはよくわかっていて、それなりにフォローしてくれた。あとで、放送されたものを見てみると、地下・・・というのはばれなかったようだ。北海道の前後の局の緊迫した雰囲気の中で、私たちだけおちゃらけているように見えた。この映像をその日の違うニュース番組でも取り上げていたというから驚きである。数日後、番組を見ていた方がはがきを下さり、「ニュースソースを探すのも大変ですね。」と書いてあった。この言葉の意味をその時はあまり理解していなかったのだ。

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